愛着の問題とソマティック・エクスペリエンシング®

嫌われるのが怖くて、ついつい相手に合わせすぎてしまう、誰かの何気ない言動がきっかけで傷ついてしまう…なんてことはないですか。原因を探ろうと過去の親子関係を振り返って、対応策も考えたのに、たくさんの本を読んで理解したのに、いざ人と接すると同じパターンを繰り返してしまう。もしかすると、これらは愛着の問題が関係しているのかもしれません。
愛着について
愛着とは、「特定の人との間に形成される、時間や空間を超えて持続する心理的な結びつき(心理臨床大辞典より)」のことです。子どもが、おもな養育者との間で愛情に基づく情緒的な結びつきを持ち、それが安全や安心の拠り所(安全基地)となっていく過程を愛着形成といいます。この人は自分が困ったときに必ず助けてくれるという、特定の相手との間に築かれる絆のことで、それがのちに人全般に対する信頼へと広がっていきます。
ところが幼少期におもな養育者と十分な相互交流が持てなかったり、愛着関係に不安定さがあると、心の安全基地が十分に育たないため、他者との関わり方にさまざまな困難が生じてしまいます。
愛着と対人関係のパターン
子どもの頃のおもな養育者との間で育まれた愛着のスタイルは、大人になってからの友人関係やパートナーシップなど、あらゆる対人関係においてのベースとなります。優しく、安定したやり取りが持てていた人は、大人になってからも人を信頼でき、ほどほどの距離感を持ちつつ親密な関係性も持て、自己肯定感も高いと言われています。しかし、そうではない場合、さまざまな困難が生じることがあります。
人を頼れない、避けてしまう(回避タイプ)
人を信頼できず、親密になりそうになると自分から距離を置いてしまいます。自分の気持ちを伝えたり、感情を表現することは苦手です。困ったことがあっても、自分で何とかしようと頑張りすぎてしまうこともあります。論理的で理性的な面を持つ一方、ときにぶっきらぼうな振る舞いをしてしまう場合があるかもしれません。
人を求めているのに近づけない(両価タイプ)
両価の文字通り、対人関係にはつねにジレンマを抱えてしまいます。人とのつながりを強く求めているのに、同時に怖いと感じてしまい人を遠ざけてしまいます。好きな人と一緒にいて幸せを感じると、同時に、見捨てられるんじゃないかと恐怖が生じてしまうため、安定的な関係を築くことが難しくなります。
人を怖いと感じ避けてしまう(無秩序タイプ)
けっして人と関わりたくないわけではないのに、傷つくのが怖く、近づくと離れがたくなるという、回避タイプと両価タイプが混ざり合っているタイプです。違いは、仲の良い人と一緒にいるのに、突然、恐怖感が生じる、支配する・されることに執着するなど、その行動に一貫性が見られないことです。
ソマティック・エクスペリエンシング®では
愛着の問題が生じているとき、自律神経系ではサバイバルモードの状態になっています。戦うか、逃げるか、凍りつくかという反応をとることで、危機的な状況を生き延びようとするのです。これはまだ十分に発達していない子どもにとっての生存戦略としては、賢い方法です。しかし、危機的状況から脱したとき、つまり、大人になってある程度身の回りのことが自分でできるようになると、このサバイバル反応が生きにくさとなることがあるのです。
たとえば、戦うか・逃げるかのパターンを持っている場合、自律神経系は過覚醒に寄りやすいか、そこに留まり続けます。イライラが止まらず人に批判的に振舞ってしまったり、逆に人から極端に距離をとってしまい、親密な関係性を築くことが難しくなります。
凍りつき反応をパターンとして持っている場合は、自律神経系は低覚醒に寄りやすく、またはそこに留まり続けます。友だちとの会食に参加しても楽しめなかったり、自分が楽しいのか楽しくないのかわからなかったり、おいしい料理も味わえなかったりするかもしれません。会食後、何日間も疲れが取れず、寝て過ごさなければ回復できないこともあるでしょう。
その人の育ちや持って生まれた資質によって自律神経系のパターンはそれぞれですが、身体から安心や安全を感じることができると、神経系は新たに学び始めます。そうすることで、これまで身に着けてきたパターンを変えていくことができ、結果として愛着の傷が癒され、関係性の修復もできると考えられています。