ソマティック・エクスペリエンシング🄬(SE™)療法
アメリカの医学生物物理学博士、心理学博士であるピーター・ラヴィーン博士(Peter A. Levine, PhD)によってつくられた、身体をベースにしたトラウマ療法です。
私たちは危機的な状況(例えば、事故、虐待、暴力、自然災害、身近な人を失うなど)に合うと、戦うか・逃げるか、そのどちらもできない場合は凍りつく(不動)という反応を起こします。このとき適切な手段やサポートがないと、身体の中(神経系)に行き場を失ったエネルギーが閉じ込められるため、不安やうつ、不眠、心身症など、さまざまな症状や問題行動が生じると考えられています。この身体に閉じ込められたエネルギーを、自身の身体感覚をつかって少しずつ安全に解放させていくことにより、その症状や問題行動を変容させ、回復へと向かっていくことができるようになります。
ソマティック・エクスペリエンシングⓇの特徴は、この身体感覚に働きかけていくこと(ボトムアップ)によって心身を癒し、その人本来の自己調整能力を取り戻していけるようサポートしていくことです。
トラウマについて
ソマティック・エクスペリエンシングⓇでは、現代においてトラウマはよりありふれたものと考えています。暴力にさらされること、虐待、自然災害、事故、落下、重い病気をする、手術、大切な人をなくす(喪失)などといった非日常な出来事から、人からの裏切り、いじめ、歯科処置、転ぶ(転倒)といった日常的に起こりえる出来事でさえもトラウマとなることがあるのです。また、意識の上では覚えていない乳幼児期における病気や事故、胎生期(母親のお腹にいたとき)におけるストレスであっても、身体(神経系)にそのときのエネルギーが解放されずに残っている可能性があり、 トラウマとなってその後の人生に影響を与えている場合があるのです。この記憶にはないトラウマでも、ソマティック・エクスペリエンシングⓇでは身体感覚に働きかけていくことができます。
他にもトラウマの原因になる出来事は数多くあり、複数の要因が重なっているケースも少なくありません。それにともなう症状や問題も広範囲にわたっているものです。
ピーター・ラヴィーン 博士はトラウマの症状は心理的であると同時に生理的でもあること、さらにはトラウマは出来事の中にあるのではなく神経系(身体)の中にあることを説き、身体(神経系)に残った未放出のエネルギーを解放させることでトラウマ症状を健康な状態に変容させることができると述べています。
ソマティック・エクスペリエンシングⓇの実際
ソマティック・エクスペリエンシングⓇでは、安全にトラウマを癒していくために、いきなりトラウマを扱うのではなく、ご本人の内・外側にあるリソース(資源)を利用し、『今、ここ』で安心あるいは安全を感じられているかに重点をおきます。リソースとは例えば、内側のものであれば、心地よく感じる身体の部分、落ち着いている身体の感覚などであり、外側のものであれば、好きな人、もの、色、場所、ペット、楽しかった思い出などがあります。
リソースを感じ、安心・安全な感覚を得られるようになってから、解消したい問題や、傷ついた出来事などについて語ってもらいます。ここでのポイントは『少しずつ』トラウマを扱っていくということです。そのためトラウマのすべてを語ってもらうのではなく、場合によっては、セラピストが途中で話を止め、身体の感覚に気がついてもらうよう介入することがあります。
少しずつトラウマのエネルギーを解放していくことは、ご本人がそのとき扱える分だけの量を扱うので無理がかかりにくいだけでなく、安全を確保しやすく、不可逆性も高まるメリットがあります。
ソマティック・エクスペリエンシング®では、『SCOPE』という心と身体を落ち着かせてくれるエクササイズがあります。 簡単ながら、ソマティック・エクスペリエンシング®のエッセンスを感じられると思います。こちらのブログにやり方が載っていますので、よかったらお試しください。https://sapporo-c.eek.jp/archives/830