いじめとトラウマ

いじめとトラウマ

 いじめの被害を受けると、生涯にわたり影響が生じるものです。自尊心が大きく傷つけられるというのもその一つです。自分は他の人とは違うからいじめられる、自分は必要のない人間だ、自分には力がない、恥ずかしい(ときに存在していることが)、消えたい、死にたいなどと思うようになることがあるのです。
 また、人とうまくつながれなくなるということも起きやすくなります。またいじめられるのではないか、また仲間外れにされるのではないかと不安や恐怖を感じ、相手に対して心が開けなくなる、人の集まるところを避けたくなって、孤立してしまうこともあります。いじめが人に与える傷はトラウマといっていいのかもしれません。

いじめの影響

 精神科医である中井久夫氏は、著書「いじめのある世界に生きる君たちへ」(中央公論社;2016)の中で、いじめの被害者は警戒的超覚醒状態と言われる状態に陥ると述べています。緊張状態が続くために自律神経系、内分泌系、免疫系という身体の大事なしくみがおかしくなり、ぴりぴり、おどおど、きょろきょろし、顔が青ざめ、脂汗が出たりするというものです。これはいじめという異常な事態における正常な反応です。しかし、こうした状態が周囲への警戒心を強め、人とつながることを難しくさせてしまいます。
 この本は、いじめやその影響について詳しく、やさしく語るように書かれています。平易な言葉で綴られていますので、大人はもちろんお子さまでもわかりやすい本です。興味があれば手に取ってみてください。

傷を被ったら

 転んでけがをしたときは、消毒をしたり、絆創膏を貼ったりしますね。いじめによる傷を被ったときも同じです。対人的なトラウマを抱えるとカウンセリングを受けるということ自体、ハードルが高いかもしれません。それでも心身に傷を被って時間が経ってもよくならないのだとしたら、ぜひお手当をしていくことを考えていきましょう。